ツーリングレポート 2009


07 白川郷 世界遺産の散策を満喫して、最後は温泉で締めた、日帰りロングツーリング
2009/10/03(土) 日帰り CB1300SB − 2009/10/12記


白川郷にて、稲刈りの終わった田んぼ越しに、かやぶき屋根の民家が連なる風景の、ツーレポタイトル用写真

先週、2ヶ月ぶりにツーリングを再開したばかりだが、2週目にして、日帰りロングツーリングに行くことになった。上記タイトルの行き先から、「超」ロングじゃないの?との声が聞こえてきそうだが、いやいや、まだまだ。そう簡単には超は付きません。超が付くのは...私がツーレポを書き始める直前の、今年7月初め、ツーリング仲間のバイク龍人さんと2人で出かけたあのツーリング、そう、あのツーリングこそが超である。おそらく100人中100人から、バカじゃないの???と言われるのがわかっているので、まだごくごく限られた人にしか話していない。案の定、話した全員が呆れ果てていた。私はまたバカと言われるのが嫌なので、決して見ることをお勧めしないが、どうしても知りたい方は、バイク龍人さんのこちらのツーレポをご覧下さい。

ね、バカでしょう。あの時は、自分でも本当に無茶なことをしてしまったと思った。龍人さんは並外れた体力の持ち主だが、私は普通の人なので、帰りの四日市あたりからはヘロヘロだった。いつもは欠かさず立ち寄る帰宅前の給油も、GSで立ちゴケしそうな程疲れていたので、給油せずに真っ直ぐ帰宅したくらいだ。でも考え様によっては、自分の限界がわかった!と言うか、限界が伸びた!!と言うか、距離感覚がよりいっそうおかしくなってきた!?!?のである。最近では私から龍人さんに、ごく普通のことのごとく、紅葉を見に、山形!!!に日帰りツーリングに行きましょうよ、とお誘いをかける程になってきてしまったのだ。くわばら、くわばら。


さて、前置きが長くなった。今回は、バイク龍人さんがウェブサイトで声を掛けて実現した、8月末のツーリングにて案が出たという、白川郷日帰りロングツーリングである。今回も龍人さんのウェブサイトでツーリングの告知をし、8月末のメンバーを含め、龍人さんのツーリング仲間数名が、各地から集まるという訳だ。待ち合わせは、談合坂SAに06:20。寝起きが良ければ、節約のため八王子ICまで下道で行こうと思い、04:00に目覚ましをかけるが、寝起きは最悪で、吐き気がして気持ちが悪い。私としては、とても珍しいことだ。昨日家でビールを少々飲んだが、到底二日酔いになる量ではない。でも気持ちが悪い。

しばらくベッドの中で悶絶しながら、気持ち悪さと格闘していたが、だいぶ経ってから何とか起きて、岐阜の天気予報をチェックしたところ、急速に回復するとのこと。これは行かねばなるまいと思い、まだちょっと気持ち悪かったのだが、急いで着替えてCBにまたがる。この時点で、既に遅刻はまぬがれられそうに無かったが、昨日中に全て用意しておいて、まだ救われた。最速ルートの、多摩川沿いの道路→中央道調布IC→談合坂SAと向かい、少し遅刻して06:30前に到着する。皆さん、遅れてすみませんでした。

既に私以外のメンバー4人は到着していて、朝食を取るなどしていた。R1200RTの「龍人」さん、以前にもご一緒したFJR1300の「カメ」さん、8月末のツーリングで初めて龍人さん、カメさんとご一緒したという、私と同じCB1300SBの「ボルドー」さんと、CB400SBの「Mr.おやき」さんである。私を加えた5人でしばらく走り、途中で関西からの参加者1人と合流するとのことである。総勢6人6台になるとのことだ。私も急いでパンで朝食を取る。この頃には、すっかり気持ち悪いのは治まっていた。いやー、良かった。

中央道初狩PA付近を走行中の写真

私がパンを食べ終わるのを待って頂いて、談合坂SAを後にする。走行順は、先頭としんがりは、龍人さんとカメさん。その間に、ボルドーさん、おやきさん、私の順に入る。龍人さんとカメさんと私は、バイクに無線機FTM-10Sを搭載しており、ボルドーさんは、タンクバッグにハンディー無線機を入れて使用している。一方、おやきさんは無線機を持っていないが、今日は龍人さん所有のハンディー機を、受信専用として貸してあげたそうで、無線で全員間の意思疎通が、ほぼ出来る。これは、単に話が出来て便利と言うだけでなく、ツーリング中に様々な無理をしなくても済むため、安全である。後者こそが、無線の最大のメリットだと思う。

中央道は、交通量はそこそこあるものの、混んでいるという程ではなく、順調に先に進む。途中休憩を入れることも無く、諏訪付近まで来たが、大型4台はいいとして、400ccのおやきさんが疲れてはいないだろうかと、少し心配になる。諏訪湖SA手前でボルドーさんが給油したいとのことで、諏訪湖SAに立ち寄る。ここで、雨が小雨から本降りになりつつあったので、皆でレインウェアを着込む。おやきさんは顔色、そして話し方を見てる限り元気そうだ。一安心。ここで龍人さんは、関西からの参加者と電話連絡を取っていた。既に長野道のみどり湖PAに着いているとのことで、ボルドーさんの給油後すぐに、みどり湖PAに向かう。みどり湖PAに着く間、雨は少し強まったが、運転に支障が出る程ではなかった。が、今日は私は、タイヤを前後とも変えたばかりの皮むきツーリングだったので、ちょっとおっかなびっくりだった。ちなみにタイヤは、ミシュランのパイロットロード2にした。

みどり湖PAに着くと、シルバーのR1200RTが停まっていた。関西から参加の「絶壁」さんだ。龍人さんの人脈には、いつもながら驚いてしまう。ちなみに絶壁さんも、FTM-10Sを装着していた。簡単にご挨拶したところで、雨の中を松本ICに向かうが、松本ICに着く頃には雨はだいぶ小降りになる。松本ICから上高地方面に出てすぐの所に、セルフENEOSがあり、私はいつもここで給油する。龍人さんも、いつもここを利用するそうだ。皆でそこに入り、給油する。このセルフGSは、このあたりではかなり安いのではないかと思う。ぜひご利用下さい。GSを出て、国道158を上高地方面へ進む。途中稲核ダム付近から雨が止み、徐々に青空も見え出す。上高地への分岐箇所、安房峠道路(トンネル)に入る直前では日も差し始め、トンネルの向こう、岐阜県側の晴天に期待が高まる。

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ちょっと長文の余談になる。

このトンネルを越えるのは、2000年のGW以来、9年半ぶりだ。はっきり覚えているのは、その時の登山で、2回危険な目にあったからだ。その頃は、今のバイク並みに登山にはまっており、GWを利用して、新穂高ロープウェイから西穂山荘経由で、単独行で西穂独標(峰、ピークで、いわゆる頂上、山頂ではない)に登ろうと思って来た。GWで、言葉上は残雪期とは言え、穂高連峰はそう甘くはない。積雪量は半端ではないし、吹雪けば遭難しかねない。特に切り立った岐阜側は、雪崩れや滑落の危険性が高い。自分としては、十分な装備と知識、そして雪上訓練でそれなりの技術を身に付けて来たと思っていたが、甘かった。雪山を単独行するには、お話にならない程、経験が足りなかったのだ。

1回目は、前泊した西穂山荘から、西穂独標に向かって登っていた時だ。独標の少し手前、あたり一面を雲に覆われた険しい峰にて、北西風によりできた「雪屁」が、南東側に大きくせり出していた。万が一にも、それを踏み抜きたくはなかった。岐阜側は危険かもと思いつつ、雪屁を踏み抜いて、長野側に滑落するよりはマシだと思い、峰の岐阜側を回りこんだ。その途中で雲がさっと晴れ、足元から真っ逆さまに、大げさでは無く少なくとも300m位、谷に向かって一直線に切れ落ちてるのが、眼下に見えた。あそこで足元から雪崩が起こっていたら、あるいはアイゼンの爪が立たずに滑落していたら、即死だっただろう。頭では、岐阜側が特に切れ落ちているとわかっていた。でも雪屁を避けたくて、踏み抜くのが怖くて、岐阜側に回り込み「過ぎて」しまい、最も安全と言われる稜線付近から、かなり外れてしまった。夏ですら、西穂は危ないよ、と聞いていたのがやっとわかった。しかし、そこでUターンして戻るのはもっと危険、と言うよりUターンなんて怖いし、技術的にも絶対出来ないので、ビビリながら何とか先に進み、やっと西穂独標に立った。これから先、西穂高岳、そして奥穂高岳へのルートは、積雪期は素人は挑んではいけない、「テクニカルルート」とされているので、ここで十分と思い、下山を始めた。

先程危険だった峰部分は、晴れた状態で上から見ると、どこを通れば安全か一目でわかり、問題無く通過した。そして西穂山荘も遠くに見え始め、ほっとした。そして油断した。間もなくして、なだらかでひらけた緩斜面で、急に吹雪き出した。初めのうちは勘と言うか感覚で下っていたが、吹雪が強くなり、程なくして完全にホワイトアウトになり、足元すら見えなくなった。ここで留まって、吹雪が止むのを待つか、あるいは少なくとも方位磁石と地図を出すべきだったのだ。しかし、吹雪の中で面倒なことをしたくなくて、そして早く山荘にたどり着きたくて、どちらも出さずに、しばらく感で進んでしまった。しばらく進んでから、このままでは危険と感じ、教科書通り、「迷ったら下らずに登る」に従い(この時点でも方位磁石と地図を出さなかった)、かがみながらで何とか見える足跡をたどって登り返した。しかし少し戻ったところで、既に足跡は吹雪で完全に雪に埋もれてしまっており、またもや勘と言うか感覚で登ってしまった(この時点でも、まだ方位磁石と地図を出さなかった)。30分位懸命に登り、ここまで来れば、晴れればここから山荘が見えるだろうと思い、体を風上に向けて、雪面にアイゼンの前爪とピッケルを突き刺し、膝、肘を雪面に置いた耐風姿勢でうずくまった。はっきり覚えていないが(時計を見る余裕すらなかった)、20分位で風は止み、視界が開けてきた。そこで2回目の恐怖を味わった。

登っていたと思っていたが、緩やかな斜面を、山荘に対して右に70〜80度位の方向に、なんと下っていたのだ。ホワイトアウトに加え、雪が深いのと重いのとで、登っているのか下っているのかすら、わからなかったのだ。その先は、谷に向かってどんどん急な斜面になっており、その1/3、いや1/5でも下っていたら、おそらく体力的に、当日中に独力でラッセルをして登り返すことは、不可能だったであろう。想像するに...それでも懸命にラッセルをして、びっしょり汗をかいて、疲れて、動けなくなって、汗で冷えて、凍えて、ツェルト(簡易テント)をかぶることすら出来ず、雪面に横たわってしまっただろうと思う。独りで、目視もきかず、積雪時に行ったこともない所で、方位磁石も地図も見ず、もちろんGPSなどまだ持っておらず、そんな状態で動き回るなんて...いったい危険の度合いは何乗、いや何十乗になるだろうか?と、冷静に考えればわかるのだが、あの時は論理的に考えられなかった。こういう状態で遭難するんだな、と思った。論理的に考えられない時、自分の欲求、欲望、そして希望だけで行動する時は危ない。滑落しなくて、遭難しなくて良かった。

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安房峠道路料金所の写真

さて、安房峠道路を抜けると、期待通り青空が広がっていた。この道はETCに対応しておらず、終点で久しぶりに手で料金を払う。料金は400円。ここの料金所は、バイクにとっては一番厄介な、全レーン機械式(自動販売機みたいなやつ)だったが、バイクが列をなしているのを見て出てきたのか、たまたま係員が我々のレーンに現れてくれて、料金は手渡しで済んだ。ラッキーだった。そして、料金所のすぐ外にあるPAにて、トイレ休憩をした。写真奥に見える山は、笠ヶ岳だろうか。

安房峠道路料金所近くのPAでの写真

トイレに行ったり、レインウェアを脱いだり、写真を撮ったり、飲み物を飲んだり、無線の調整をしたり...と、各自が各自、色々なことをしていた。とにかく良かったのは、ここで雨の心配がほぼ無くなったことだ。

安房峠道路料金所近くのPAで、CB1300SBが2台並んでいる写真

左が私のCB1300SBで、08モデル、右がボルドーさんの09モデルだ。ホンダの09モデルのプレスリリースでは、確かカラーリングの変更のみと書いてあった。パッと見では、ホイールとエンジンカバーの色が違った。ホイールは、ゴールドは高級感があってとても良いが、私個人的にはブレーキダストが目立たない黒で良かった。エンジンカバーは、好みの問題だろう。ボルドーさんは、フロントスクリーンをワイバン製のロングタイプに変えて、それでも足りなくて、更に自作の発泡スチロールパーツで延長していた。効果の程が気になるが、ツーリングの最後に聞いたところ、標準が一番いいかも知れない、とのことだった。

国道158を快走中の写真1

平湯トンネルを抜け、国道158を快走する。天気も良く、道も空いていて、とても気持ちがいい。前から順に、龍人さん、ボルドーさん、絶壁さん、おやきさん、私、カメさん、と連なって走る。これは私の前方4台の写真。

国道158を快走中の写真2

で、これは後ろのカメさんの写真。ブレててすみません。

そのうち、なんとなく小腹が空いてきた。それを皆に無線で伝えると、一人だけしゃべれないおやきさんが、うんうんうんと、ヘルメットを激しく縦に振って、俺もお腹空いた!と猛アピール。すぐ後ろの私がその様子を皆に伝えたところ、たまたま1km先に、道の駅「アルプ飛騨古川」があり、そこに寄る事になった。

道の駅「アルプ飛騨古川」でバイク6台整列の写真

道の駅「アルプ飛騨古川」にて。きれいに並んでいる。こう並べてみると、でかいはずのCB1300SBが、小さく見える。

道の駅「アルプ飛騨古川」で軽食の写真

白川郷までは、そう遠くはないとのことで、食べる楽しみは後にとっておき、ここでは軽く食べる程度にしておいた。私のセレクションは、なぜかフランクフルトとゆで卵2つ。なんでフランクフルトと卵なのかと言うと、既にボルドーさんとおやきさんの、大食いツートップ!?が買い占めた後だったせいか、他に適当なものが無かったのだ。そして、なんで卵が2つかと言うと、2つセットでしか売っていなかったのだ。ゆで卵2つで50円と、激安だった。

道の駅を出て、しばらく進んで左に折れ、国道360に入ると、だんだん険しい山道ルートになってきた。ここで、路面のあちらこちらに筋となって溜まっている、濡れ落ち葉の洗礼を受けた。少し前までの雨風で、道路には森の木々の葉が散らばっている。路面のなかでも、周りより少しでも低い場所には、雨水で流されてきた濡れ落ち葉が、幾筋にもなって積み重なっていた。この濡れ落ち葉にタイヤが載ると、滑る滑る。特に、バイクをバンクさせた状態で後輪が載ろうものなら、ズリッっと後輪が横に滑る。無線で、「今滑りました!」とか、「また滑った!」とかの声が聞こえてくる。路面が周りよりも低く、濡れ落ち葉が集中しているのは、概してきついコーナー部である。私の新品タイヤの皮むきは、この時点でほぼ終わっていたが、やはりちょっと怖くて、なるべくバンクさせないようスピードを落とし、舵角で曲がる。

この峠道は道幅が狭めで、1.5車線幅といったところだ。車同士がすれ違う時には、かなりスピードを落とす必要があるだろう。にもかかわらず、時々すれ違う対向車は、道路のセンターから大きくはみ出して突っ込んでくる、らしい。らしい、と言うのは、そんな恐ろしい目にあっているのは、先頭を走ってくれている龍人さんだけか、せいぜいその1台後ろまでだからだ。龍人さんが車とすれ違う度に、後続車に「車行きまーす」と無線が入る。後ろから付いて行く方は、お気楽で申し訳ないが、お気楽に走れるのは、いつも先頭を走ってくれる龍人さんのおかげだ。

さあ、もうすぐ世界遺産の白川郷だ。白川郷に着くほんの少し手前で左に折れ、白川郷の全景を望むことが出来る展望台に立ち寄った。

白川郷全体を展望台より望んだ写真

思っていたよりは、規模が小さいんだなと感じた。あと、全部が全部、かやぶき屋根の民家ではなかった。世界遺産という言葉に、ちょっと過大な期待をしていた様だ。しかし、昔の日本の山村は、どこもこんな感じだったんだろうと思わせる、そんなほのぼのとした風景だった。

展望台を後にし、少しだけ道を戻って、いよいよ白川郷の中に向かう。世界遺産に登録された当初は、白川郷の中には車やバイクは一切入れず、離れた駐車場からシャトルバスで往復したそうだ。今はもう世界遺産ブーム!?が落ち着いたのか、白川郷のメインストリートに車で入れて、メインストリート沿いにある小規模な、あるいは村はずれに整備された大規模な駐車場に、駐車することが出来る。我々は村はずれの河川敷にある、大きな駐車場に停めた。領収書によると、みだしま公園駐車場というらしい。駐車料金は、車500円、バイク200円だった。

白川郷のメインストリートの写真

メインストリートは、駐車場所を探しながらノロノロ運転をする車で、混雑気味。その脇を男6人で、町並みを見ながらなのか、はたまた、おいしそうな食べ物を探しながらなのか、それぞれの思いを胸にゆっくり散策をする。

白川郷のメインストリート沿いの、ある民宿兼アイスモナカ屋さんの写真

こちらの立派なかやぶき屋根のお宅は、民宿、兼、アイスモナカ屋さんだ。早速おやきさんはここに目をつけたらしく、帰りに寄るか、と言っていた様な気がする。

飛騨牛コロッケの写真

私は写真を撮りながら、集団から少し遅れて歩いていたが、しばらくすると前方でメンバーが立ち止まっていた。お目当てはこれ、飛騨牛コロッケだ。龍人さんのお子さんの、大のお気に入りらしい。そんなにおいしいなら、と言うことで、私も一つ頂いてみる。

飛騨牛コロッケを一口食べた後の写真

なかなかのサイズとボリュームで、衣もサクッと揚がっており、おいしい。中身のジャガイモの味付けも、ちょうど良い。惜しむべきは、おそらく揚げた後、衣に大量の塩を掛けているのだろうか、その塩味が強過ぎて、折角の飛騨牛の味が良くわからなかった。飛騨牛を前面に押し出すなら、要改善である。

白川郷のメインストリートで見つけた、飲み物の自動販売機の写真

コロッケを食べ終わり、メインストリートをゆっくり進む。ふと自動販売機に目をやると、さすがは世界遺産、自動販売機も、目立つ色ではなく、ちゃんと木目調で、周囲になるべく溶け込む様になっている。

お食事処「けやき」の写真

しばらく進んだところで、集団はまたトラップに引っかかる。こちらのお食事処「けやき」だ。かやぶき屋根ではないが、建物が新しくきれいな割には、周囲の景観にもマッチしており、中もゆったりしてそうだ。ちなみにボルドーさんは、ここまで、蕎麦、そば、ソバ、と連呼していた。ここはお蕎麦専門のお店と言う訳ではなさそうだが、メニューには蕎麦もあるので、こちらで昼食を取ることになった。

お食事処「けやき」の店内の写真

中に入ると、既に昼食のピークを過ぎていたせいか、ゆったりと席に座ることが出来た。このお店は、外観と内装だけリフォーム済みの様で、中の骨組みにはこんな立派な梁が、昔そのままに使われている。少し前では日本民家園で、最近では大内宿で、この様な古い民家の中を見学する機会があったが、重機も無い時代に、よくもまあこんな立派な建物を造ったものだ、と感心した。

蕎麦定食の写真

他の5人は飛騨牛のステーキ定食を頼んだが、私はボルドーさんの暗示にかかったのか!?どうしても蕎麦が食べたくなり、蕎麦定食にした。お味はまあまあであった。皆さんのステーキ定食は、生のお肉を焼い食べるという形で配膳された。このうちボルドーさんのお肉だけが、なぜかなかなか焼けず、まだ焼けない、まだ焼けない、と連呼していた。

白川郷のメインストリート沿いの、ガソリンスタンドの写真

昼食を終え、会計時に土産物屋さんの割引券をもらい、外に出る。まだまだメインストリートは続き、腹ごなしの散策を続ける。途中、道沿いにJAのGSを見つけるが、GSもこの通りこげ茶色の外装色で、先程の自動販売機と同様、村全体として、景観を守ろうと努力しているのがよくわかる。

土産物屋さん「いろり」の写真

少し進むと、道路右手に、先程割引券をもらった土産物屋さん、「いろり」を見つける。これはお店を出た後に、振り返って撮った写真。こちらも大変立派な、かやぶき屋根の建物である。皆さん色々物色して、お土産を買っていた。

白川郷の裏通りの田んぼの中に、ぽつんと建つ民家あるいは納屋の写真

メインストリートを歩くのに少々飽きてきてしまったので、右に折れて裏通りを進む。メインストリート沿いとはまた趣が異なり、これぞ私のイメージの中の白川郷、という風景が次々に目に飛び込んでくる。この写真の場所など、お代官様とそのお供が、馬に乗って通り過ぎていてもおかしくない風景だ。つい最近になって初めてDVDで観た、黒澤明の「七人の侍」に登場しそうな風景である。

白川郷の裏通りの水路の写真

裏通りには、この様に水路が張り巡らされている。これは、田んぼがあるので当たり前なのかも知れないが、なぜかこうした澄んだ水の流れを見ると、心が落ち着いてくる。日本人、あるいは人間の脳に、いや、心に、そう刻み込まれているのかも知れない。

白川郷の裏通りの田んぼの写真

田んぼの稲は、既にたわわに実っており、場所によっては、稲刈りも終わっている。ちょうど今が、稲刈りの時期なのだろう。この、一面黄金色の田んぼも、間もなく刈り取られるのだろう。

白川郷の裏通りの、普通のお宅の写真

裏通りにも、かやぶき屋根ではなく、普通のお宅も存在する。こちらのお宅などは、近くで見ると、まだ新築からそう経っていない様に見えるが、引いて見ると、しっかり白川郷の景観に溶け込む様な外装になっている。

内部を見学できる建物を覗き込んだ写真

メインストリート沿い、裏通り沿いを問わず、白川郷には、内部を見学用に公開している、かやぶき屋根の民家が多くある。お腹が一杯なのと、ライディングブーツを脱ぐのが面倒なのとで、結局どこにも入らずじまいだったが、ある建物の中をのぞいてみた。中の囲炉裏には、本物の火がくべてあり、少し驚いた。火が屋根に燃え移ったら、あっという間に燃え広がり、貴重な建物が全焼してしまうだろう。火の番、をしている人がいるに違いない。大抵こういう所の囲炉裏の火は、電球と赤いセロハンで、火を模したもののことが多いのだが、さすが本格的だ。

かやぶき屋根断面のアップの写真

大内宿で展示を見て初めて知ったのだが、ただ厚く重ねている様に見えるこのかやぶき屋根は、実は植物ごとの性質に応じて、一番下の屋内側から一番上の屋外側まで、なんと7種類もの植物を使っているとのことだった。しかも、それぞれの厚さはどれも同じではなく、試行錯誤を重ねて、厚さもそれぞれで変えていたそうだ。これぞ、先人の知恵である。ちなみに7種類というのは、大内宿の代表的建物の場合で、この白川郷で何種類を使い分けているかは、不明である。

白川郷の裏通り沿いに、案山子を発見の写真

ふと、近くの田んぼに目をやると、案山子が二人で番をしていた。久しぶりに、案山子を見た気がする。日本の田んぼに案山子がいなくなったのは、なぜだろうか。案山子に効力が無いことが、明らかになったのだろうか。あるいは、農薬やらの影響で、すずめなどの小鳥が、稲をついばみに来ることがなくなったのだろうか。もし後者だとしたら、怖い話である。ところで、私の近くにいた若い外人のカップルは、案山子を見てとてもエキサイトして、異常なまでの興味を示し、前後左右斜めから写真を撮りまくっていた。確かに海外で、案山子に似たものを見たことはない気がする。

かやぶき屋根の民家が連なっている写真

稲刈りの終わった田んぼ越しに、かやぶき屋根の民家が並ぶ写真

たわわに実った田んぼのの奥に見える、数件のかやぶき屋根の民家の写真

この3枚の写真あたりこそが、皆さんの白川郷のイメージではないだろうか。特に説明は要るまい。眺めていてとても落ち着く、日本の山村集落の風景である。おそらく、昔はどこにでもあった風景だろう。

民宿兼アイスモナカ屋さんにある、水車の写真

裏通りをぐるっと回って、メインストリートに舞い戻った。白川郷の散策を満喫し、ご機嫌な気分だ。皆で、さあ恒例の日帰り温泉に向かおう、と、メインストリートを駐車場に向かって戻っていると、白川郷を歩き出して最初に目に付いた、あの民宿兼アイスモナカ屋さん前を通りかかった。すると皆、吸い寄せられる様に、その建物の敷地内に入っていった。中に入ってみると、結構大きな池があって、水車から水が流れ込んでいる。池の中には丸々と太った鯉が、悠々と泳いでいる。私はまだお腹が一杯だったので、やめておいたが、ここで数名がアイスモナカに舌鼓を打つ。そして、駐車場へと戻る。

駐車場に戻り、準備をしつつ、TMで近くの日帰り温泉を探す。すぐ近くに一軒見つかるが、もう間もなく営業時間が終わってしまうとのことだ。残念。すると絶壁さんが、ここから国道156を南に下って間もなくの所に、出来たばかりの日帰り温泉があるとの情報を、駐車場の係員のおじさんから入手してきた。出来たばかり→きれいで広い休憩用の大広間がありそう→仮眠出来そう、なので、早速そこに向かうことにした。

国道156を南下中の写真その1

国道156を南下中の写真その2

少し日が陰ってきて、肌寒くなりつつある国道156を南下する。温泉近くと思われる交差点で街中に入り、そこでちょっとだけ迷ったが、親切な地元の方が、場所を教えてくれた。遠くからでも目に付く、大型の施設である。これは期待できる。

が、着いてみると、駐車場はガラガラで、なんかおかしい。そして入り口には、今日は「調整の為臨時休業」の張り紙が。ショック。かき入れ時のはずの土曜日に、臨時休業するか?施設としては、期待度大だったのに。仕方無く、温泉施設のすぐ上にある、道の駅「飛騨白山」に移動して、次の候補を探す。この道の駅自体が、つい最近出来た様で、TM2008には載っていない。どうもこの温泉施設は、道の駅の併設施設らしい。

駐車場で、私とボルドーさん、おやきさんが、バイク談義をしている間に、頼りになる残りの3人が、次の候補を見つけてくれた。まいどすみません。国道156を、更に南下したところにあるとのことだ。道の駅を出発し、またまた国道156を南下する。途中、前方に、巨大なロックフィル式ダムが現れる。後でTMでチェックした所、御母衣ダムとのことだ。ダムの種類は、ツーレポ2009の05にて、アーチ式とロックフィル式の2種類だけは覚えた。


この直後、バイクと車の、とても、とても悲惨な事故現場に遭遇する。ここで詳細を記述するのは、差し控えたい。しかし、女性が懸命に心臓マッサージをし、その脇にがっくりと膝を着きながら、おそらくご友人と思われる方が、「○○さん!!!」と懸命に呼びかけている光景が、脳裏から離れない。色々と思うところがある。とにかく、その方のご無事をお祈りしたい。


国道156から国道158に入って間もなく、前方に道の駅「桜の郷荘川」との看板が現れる。更に近くなると、道の駅には温泉併設との看板も現れる。そして龍人さんを先頭に、道の駅に入っていく。山間にあるにしては、ずいぶん広い道の駅だ。温泉施設的にも、期待が持てそうだ。トップケースからお風呂セットを取り出し、温泉棟に向かう。ここには食堂もあるようで、夕食をここで食べられそうだ。

この温泉は、JAF会員証を提示すると、3名までか4名までかが、割引で1人600円になる。幸い、龍人さんとカメさんが会員証を持っていたので、6人全員割引料金で入れた。ちょっと得した。龍人さんとツーリングに行くと、よく体験するのだが、結構色々な所でJAF割引があり、その割引額もバカに出来たものではない。割引のある施設をあらかじめ調べて行く様にすれば、おそらく年4000円の年会費分は軽く浮いてしまうだろう。今までは、ドリーム店や任意保険のロードサービスがあるから、JAFは入らなくてもいいやと思っていたが、私も入会を検討してみようと思う。

さてこちらの温泉、タオルだけでなく、なんとバスタオルのレンタルまで、料金に含まれている。もちろんボディーソープ、シャンプー、コンディショナーは備え付けなので、本当に手ぶらでOKなのだ。料金が1000円以上の所、例えば1500円などするホテルの日帰り入浴を除くと、バスタオルのレンタル付きは初めて見た。

肝心の温泉はというと、まず外の露天風呂に入ったが、お肌がつるつるしてきて、とても良い。女性なら、たまらず長湯してしまいたくなるところだろう。ここで皆が、「内湯に入った?入った?あれは驚くよ〜」と盛んに言う。その理由を聞こうとするが、入ればわかるとのことで、はっきりとは教えてくれない。では、後で入ってみよう。

ここでも、バイクやツーリング、そして大食い談義に花が咲く。今日は6人6台。マスツーリングとして出かける場合でも、ちょうどこれ位までが良い。これ以上多くなってしまうと、全員とは話せなくなってしまったり、どうしても走行に無理が生じてしまったりするだろう。十分温まり、このままだとのぼせてしまいそうなので、話題の内湯に入ってみる。すると、とんでもない水流に足をすくわれる。まるで流れるプールの、出水口の目の前に入ってしまったかの様だ。たまらず「うおーっ!」と叫び、流される。すると、そこで流されるのを楽しんでいたと思われる若者達に、笑われてしまい、ちょっと恥ずかしい。


温泉を出ると、広い畳敷きの広間があった。そこで各自ごろごろして休憩していたが、そのうち何名かは眠ってしまった様だ。帰りは長いので、ちょうど良い仮眠になるだろう。私は眠くなかったので、龍人さんのTMを借りて、今日来たルートをたどってみた。ここでやっと、自分が来た道がわかり、しかもとんでもなく遠い所にいることがわかった。白川郷は、岐阜県とは言っても、一番北西の端にある。なんと、富山と石川県の県境近くだ。しかもここから東京方面に直線的に帰れる高速道路は無い。選択肢としては、東海北陸道→東海環状道→東名道か、東海北陸道→中央道か、東海北陸道→北陸道→上信越道→関越道の3つだ。しばらく国道を走って、松本ICあたりから中央道という案もあったが、夜間の一般道、とくに山道走行は危険を伴うので、避けたほうがいいというカメさんの意見もあり、高速3経路から選ぶことになる。

そこでちょうどボルドーさんが、突然「減った!」と叫びながら目覚めたので、全員で多数決をとった。そしてなぜか、一番距離が長い、3番目の案の北陸道経由になった。皆さん、物好きですね。ボルドーさんは余程お腹が空いていたらしく、その後すぐに一人で食堂に行ってしまった。北陸道経由と言うことは、関西から参加の絶壁さんとは、ここでお別れ。では、ここで夕食を済ましていきましょう、ということになり、残りの5人も食堂へ。食事を待つ間、食事をしている間、そして食事が終わってからも、これからの長い道のりを知ってか知らずか、話が尽きることは無かった。さすがに外も真っ暗になってきたので、ぼちぼち切り上げて、帰路につくことにした。


直近のICは、東海北陸道の荘川IC。よって、このICで絶壁さんとはお別れとなる。またご一緒しましょう、と無線で呼びかけ合いながら、ICの分岐でお別れした。ここからは自宅まで、約600kmの旅である。帰り、しかも真っ暗になってから600kmとは、私の距離感は、やはりだいぶおかしくなってきている様だ。さて、少なくともこの辺りの東海北陸道は、片側1車線の対面通行で、IC付近のみ追い越し車線がある片側2車線となる。所々遅い車に阻まれながらも、時々現れる追い越し車線で抜きながら、まずまずのペースで進む。途中、おいしいおにぎりがあるハイウェイオアシスがある、という龍人さん情報で、城端SA(?)に寄るが、ハイウェイオアシスは、既に営業終了。寒くなってきたので、缶コーヒーを飲んで、防寒着としてレインウェアを上下着込み、グローブもレイングローブに替える。

この後からは、だんだん疲労が溜まってきて、頻繁に休憩しながらの走行となった。北陸道の途中で、おやきさんのガソリン残がきわどくなり、有磯海SAに滑り込んで給油と休憩をしてから、上信越道に入る。上信越道の北部は初めて通ったが、やはり片側1車線の対面通行だった。志賀高原への長野側からの入り口、信州中野IC手間あたりから、片側2車線となった。今回はこのあたりで、ああ、もう志賀か、先は見えたなと思った。ロングツーリングを重ねる毎におかしくなる距離感覚には、困ってしまう。この後は、東部湯の丸SAで給油し、その後、走行中に皆少し眠くなり、甘楽PAで少々ハイテンションになりながら休憩。関越道に入り、高坂SAに寄ったかどうかを覚えていないが、最後は三芳PAに寄り、ここでレインウェアを脱ぎ、しばし歓談の後、各方面へ向かって解散となった。

練馬で関越道を下り、私とボルドーさんは、谷原の交差点で右に折れて、環八を南下。ボルドーさんとはしばらくしてお別れし、私はそのまま環八を南下して帰宅した。今日の出発は05:30前、帰宅は04:00。22時間半のロングツーだった、それでもまだ今年7月初めに、バイク龍人さんと行った私の日帰り最長不倒ツーリングとは比べ物にならない程、楽勝だった。

走行後のトリップメーターの写真

今日の走行距離は957.7km、燃費は最後の給油のレシートが見つからないため不明。日帰りツーの距離は、下道を織り交ぜて、ゆっくり温泉で休憩をするとなると、700〜800km位が翌日に疲れも残らず、ちょうど良さそう。でも山形に紅葉日帰りツーに行きたい。


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